空港を出た瞬間、空気が違った。
重く、湿り気を帯びた風。 どこか甘い匂いが混じっている。
それは花なのか、海なのか、 それとも街そのものの匂いなのか。
タクシーの窓から見える夜景。 山の稜線に光が散らばる。
リオの夜は、生きている。
遠くから音楽が流れる。 ドラムの低いリズム。 誰かの笑い声。
クラクションが鳴る。 しかしそれは怒りではなく、 ただの合図のようだ。
ホテルに着くころには、 体は疲れているはずなのに、 心だけが冴えている。
窓を開ける。 夜風が入り込む。
遠くに、海の気配。 波の音は聞こえない。 それでも、そこにあるとわかる。
初めての街で迎える夜は、 少しの不安を連れてくる。
道は安全だろうか。 言葉は通じるだろうか。
だが同時に、 強い期待が胸を押す。
下の通りでは、 若者たちが集まっている。 笑い声が夜に溶ける。
誰かがギターを弾く。 それは完璧な演奏ではない。 けれど、生きている音だ。
リオは、完璧な都市ではない。 だが、それがいい。
すべてが整っている場所より、 少し不揃いな場所の方が、 心は動く。
ベッドに横たわる。 天井を見つめる。
遠くの音楽はまだ続いている。 夜は終わらない。
それでも目を閉じる。
明日、この街を歩く。 海を見る。 山を見上げる。
そしてきっと、 今日の不安は、 小さな笑い話になる。
リオ、最初の夜。 それは、静かな始まりだった。